プロテインを飲み始めて、なんとなく「体づくりちゃんとやってる」気がする。でも振り返ってみると、ここ一週間の食事は意外と雑——。コンビニ・パン・麺が多くて、野菜や豆類はほとんど食べていない。お腹の調子がなんとなく微妙だけど、原因はよくわからない。
そういう感覚、覚えがある人は多いと思います。プロテインだけが先に整って、食事全体が置き去りになっているパターンです。
プロテインは便利な道具です。ただ、それを飲んでいるからといって、食事全体が整ったことにはなりません。足りないものを「サプリで足せばOK」とも、最近の研究を見るかぎり言い切れない。まずは、いつもの食事で野菜・豆・全粒穀物が入っているかを見る方が現実的です。
プロテインを飲むと、食事も整った気になりやすい
プロテインは、体づくりをする人にとって便利な道具です。手軽に栄養が補える安心感がある。だから「とりあえずプロテインを飲んでおけば大丈夫」という感覚になりがちです。
ただ、プロテインで足りるのは基本的に「タンパク質」の部分だけ。野菜や豆類、全粒穀物などから入る別の栄養までは補えません。
体づくりを始めた人ほど、こんな食事になりやすい:
- 朝:プロテイン+パン
- 昼:コンビニのおにぎりとサラダチキン
- 夜:肉中心のメニュー+ごはん
- 間食:プロテインバーやプロテインドリンク
「タンパク質は十分」かもしれません。でも、野菜や豆類、全粒穀物が少ないまま、というパターンも多い。
「足りないものはサプリで足せばいい」と考えがち
食事が偏っていることに気づくと、次に出てくる発想がこれです。
「プロテインで足りない分は、食物繊維のサプリで足せばいいかも」
気持ちはわかります。でも、ここに落とし穴がありそうだ、という話が最近の研究で出てきました。
太り気味の人を対象にした小さめの研究で、高タンパクの食事に「ある種類の食物繊維サプリ」を足してみたところ、糖を処理する力(体の代謝の調子に関わる指標)が、むしろ少し下がる方向に動いた——という結果が出ています。
これだけで「食物繊維は悪い」「高タンパクは危険」と決めつけるのは早すぎます。あくまで 特定の条件・特定の食物繊維で見えた1つの結果。研究の細かい中身は、記事の後半で扱います。
でも、こう言うことはできそうです。
- サプリを足せば食事の雑さを帳消しにできる、とは限らない
- 足し方や種類によっては、想定通りに動かないこともある
- サプリで補う前に、まず食事の「中身」を見直す方が早そう
明日からどこを見直せばいいか
極端に「プロテインをやめる」「サプリは全部ダメ」ではありません。プロテインも食物繊維サプリも、必要なら使っていい。
ただ、その前に確認したいのが、いつもの食事の中身です。
野菜・豆類・全粒穀物が、自分の食事にどれくらい入っているか。コンビニ・パン・麺ばかりになっていないか。プロテインで「整った気になっている」だけで、実は3日分の食事を振り返ると野菜が片手分くらいしかない——というパターンも、けっこうあります。
オートミール
大豆・豆腐
豆類・きのこ
少しずつ調整
-
サプリで一気に食物繊維を増やす前に、食品ベースで考える
野菜・豆・全粒穀物・果物などを少しずつ増やす方が、急激な変化が起きにくい。まずはここから。 -
「プロテイン信仰+食物繊維サプリ」の組み合わせは慎重に
組み合わせの結果がまだ整理されていない領域。1〜2週間ずつ様子を見ながら、自分の体感と相談する。 -
体感で違和感が出たら、迷わず立ち止まる
お腹の張り、便の変化、だるさなどが続く場合は、続ける前に一度減らしてみる、または医師・管理栄養士に相談する。
ここまでが、初心者向けの整理です。
「で、結局どうすればいいか」が分かれば、ここで読み終わってOKです。もっと深く知りたい人は、ここから先で研究の中身・条件・限界を整理しています。
もっと深く知りたい人へ — 研究の中身
ここから先は「もっと根拠まで知りたい」人向けです。前半で出てきた話の元になっている、2つの研究を整理します。専門用語にはできるだけ日本語訳を添えます。
1. 全体像のレビュー(Mak et al., 2025)
2025年に発表された 系統的レビュー(多くの研究を集めて整理した研究) があります。タンパク質と食物繊維の組み合わせを調べた、人を対象に比べた研究(RCT)を50本まとめ、そのうち15本でネットワーク・メタアナリシス(複数の研究の数値を統合する分析)も行った大きな整理です。
ここで見えてきたことを、ざっくり3つに整理すると次のようになります。
- タンパク質の量や種類自体は、腸内細菌の 「構成」 を大きく変えるわけではなかった
- ただし、タンパク質量は腸内細菌の 「機能」(発酵で何を作るか)には影響しうる
- だから、タンパク質量と食物繊維量は両方をセットで見るのが大事
ここまでは「足せばOK」に近い方向です。タンパク質と食物繊維、両方バランスよく——という整理。
- レビュー上は基準的な状態
- 多くの研究で比較対象
- 意外と発酵産物に違いが出る場面も
- 組み合わせは整理途中
- 特定の発酵産物が増えやすい
- レビューで言及あり
- 典型的な「不足」パターン
- 食物繊維を増やす方向は無理がない
ところが、もう少し具体的に介入したRCTを見ると、別の話も出てきます。
2. 想定と逆方向の結果が出たRCT(van Kalkeren et al., 2026 / DISTAL試験)
2026年に発表されたRCT(人を対象に比べた研究)です。「DISTAL試験」と呼ばれている研究で、前半で「小さめの研究で想定と逆の結果」と書いた、その元になっている試験です。
研究の中身
- 対象:太り気味〜肥満の成人 約40人(解析対象 37人)
- 期間:12週間
- 食事:総エネルギーの25%をタンパク質から摂る「高タンパク食」(うち約45%は植物性)
- 介入物:ポテト食物繊維 + シュガービートペクチンを 50:50 で混合、合計 15 g/日(ゆっくり発酵するタイプの食物繊維サプリ)
- 比較対象:マルトデキストリン(比較用に使われた糖質系の成分。一般に「プラセボ」と呼ばれる役割)
- 主に見た指標:糖を処理する力(インスリン感受性)
見えた結果
- 食物繊維を足した群で、糖を処理する力(全身インスリン感受性)が低下(統計的に有意・p = 0.034)
- 末梢の組織でも、糖を処理する力は低下傾向(p = 0.081)
- 大腸のバリアに関わる指標(腸透過性)が上昇(p = 0.046)
- 炎症に関わる血液の指標(IL-6)も上昇(p = 0.025)
- 一方、タンパク質の燃やし方(タンパク質酸化)の増加は抑制された(p = 0.048)
- 体組成や腸内細菌の構成自体は、目立った変化なし
著者の解釈
著者は「食物繊維と高タンパク食の組み合わせは、比較対象の群と比べて糖を処理する力と代謝の柔軟性を低下させた」と整理しつつ、「食物繊維とタンパク質サプリの間に潜在的な負の相互作用がある可能性があり、さらなる調査が必要」と慎重に書いています。「食物繊維は悪い」「高タンパク食は危険」という強い主張は、著者自身もしていません。
3. 大事な前提(条件の限定性)
この結果をどう受け取るかで気をつけたいのは、研究の条件です。
- 対象:太り気味〜肥満の成人 約40人(小規模)
- 期間:12週間(中期間)
- 食物繊維の種類:ポテト食物繊維 + シュガービートペクチンの「ゆっくり発酵するタイプ」のサプリ・1日15 g
- 食事の前提:総エネルギーの25%が高タンパク食(うち約45%は植物性)
- 比較対象:マルトデキストリン
つまり、痩せ型の人・標準体重の人・高齢者・別の種類の食物繊維・別の量・別の摂取期間では、結果が変わる可能性が十分にあります。1本のRCT(小規模・特定条件)で「食物繊維は悪い」「高タンパク食は危険」と読み替えるのは、この研究の主張範囲を超えています。
読むときの注意
この記事で紹介したRCT(van Kalkeren et al., 2026 / DISTAL試験)は、太り気味〜肥満の成人 約40人を対象にした12週間の試験で、特定の食物繊維(ポテト食物繊維 / シュガービートペクチンを50:50混合・15 g/日)を使った結果です。痩せ型・標準体重・高齢者・別タイプの食物繊維では、結果が変わる可能性があります。
1本のRCTで「食物繊維は悪い」「高タンパク食は危険」とは言えません。サプリで体調を変えるときや、持病・治療中の場合は、必ず医師・管理栄養士などの専門家に相談してください。この記事は医療的アドバイスを提供するものではありません。
まとめ
- プロテインは便利な道具。でも、それだけで食事全体が整ったことにはならない
- 「足りないものをサプリで足せば必ず良い」とは、最近の研究を見るかぎり言い切れない
- まずは普段の食事で、野菜・豆・全粒穀物が入っているかを見る方が現実的
プロテインを飲むこと自体も、食物繊維を意識すること自体も、体づくりの方向としては自然なことです。ただ「サプリで足せば足すほど良い」とは限らない——というのが、最近の研究から見えてきた一つの見方。
明日からの食事を全部変える必要はありません。野菜の量、豆の頻度、いつもの主食を全粒穀物に変えてみる——そんな小さなところから、無理なく整えていく方が、結果的にうまくいくことが多そうです。