筋トレを始めると、必ず出てくる話がある。「プロテイン、ちゃんと取ってる?」
体重×2gとか、体重×1.6gとか、人によって言う数字が違う。プロテインパウダーは必須だという人もいれば、食事で十分だという人もいる。
結局、自分は1日何g取ればいいんやろ。今回はここを整理する。
必要量は「目的」で変わる。一般成人の基準は0.8g/kg/日。筋肥大を目指すなら1.6g/kg前後が目安。「体重×2g」は減量中の高め設定として根拠のある数字。
タンパク質が毎日必要な理由
タンパク質は筋肉だけに使われるわけじゃない。消化酵素、ホルモン、免疫物質、皮膚、爪、髪——体をつくるほぼすべての材料がタンパク質由来だ。
そして体内のタンパク質は常に「壊されては作り直される」状態にある。これをタンパク質のターンオーバーという。筋肉でいえば、毎日全体の約1〜2%が分解・再合成されている。
だから、食べない日が一日あってもすぐには壊れない。でも慢性的に不足すれば、体は維持できなくなっていく。毎日の補給が必要な理由はここにある。
目的別の目安量
どれくらい必要かは、「何を目指しているか」で変わる。
まず基準になるのはWHOが示す0.8g/kg/日。これは健康を維持するための推奨値で、運動をほとんどしていない成人向けの数字だ。
これに定期的な運動が加わると必要量が上がる。Phillips & Van Loon(2011年)のレビューでは、定期的にトレーニングを行っている人には1.6〜1.7g/kg/日程度が適切とされている。
筋肥大を目指す場合も、この近辺が目安になる。Morton たち(2018年)のメタアナリシスでは、タンパク質摂取量と筋肉量増加の関係を分析した結果、1日1.62g/kgを超えると、それ以上摂っても筋肉量の増加はほぼ頭打ちになるという結果が出ている。「多ければ多いほど筋肉がつく」わけではない。
一方、減量中のトレーニング者は少し話が変わる。カロリーを制限している状態では筋肉が分解されやすい。Helms たち(2014年)のレビューでは、減量中の筋トレ者には2.3g/kg/日前後まで引き上げることで筋肉量が維持しやすいと示されている。「体重×2g」が言われるのは、この文脈での高め設定として根拠がある。
体重別に計算してみると
目安値が出たところで、具体的な数字に落とす。筋トレ・筋肥大を目的とした場合(約1.6g/kg/日)を基準にすると、こうなる。
体重60kgなら1日約96g。体重70kgなら約112g。体重80kgなら約128g。
「思ったより多い」と感じる人がほとんどだと思う。鶏むね肉100gに含まれるタンパク質は約23g。卵1個は約6g。豆腐1丁(300g)で約20g。食事だけで1日100g近く取ろうとすると、かなり意識しないと届かない。ここでプロテインが選択肢として出てくる。
1食あたり、どれくらいが有効か
「一度にたくさん摂れば効率的では?」という発想は自然だが、話はやや複雑だ。
Moore たち(2009年)の研究では、1回の食事で筋タンパク合成の「速度」を最大化するには20〜40g程度が有効と示されていた。ただし近年の研究では、それ以上の量を一度に摂っても「すべて無駄になる」わけではなく、吸収・利用が長い時間軸にわたって続くことが確認されている(Trommelen et al., 2023)。「まとめて摂れば効率が上がる」とも言えないが、「20gを超えたら全部ムダ」でもない。
現時点での実践的な整理は、1食あたり20〜30gを目安に複数回に分けること。これは「上限」ではなく「1回で確実にシグナルが入る目安量」として捉えると使いやすい。
特に朝食は見落とされやすい。睡眠中はタンパク質を補給できないため、起きてすぐに適量を摂ることで1日のリズムが整いやすくなる。
ヨーグルト等
豆類等
大豆製品等
プロテインは「補助」として使う
プロテインパウダーは「飲むと筋肉がつく」魔法の粉ではない。タンパク質を含む食品の一種だ。
食事から摂るタンパク質と、プロテインパウダーから摂るタンパク質は、体内での扱いに大きな差はない。プロテインが便利なのは「手軽に20gを素早く補える」という点だ。
食事でタンパク質が十分に取れている人には、必ずしも必要ではない。逆に食事が不規則だったり、肉・魚・卵を毎食食べるのが難しい場合には、プロテインで補うのは合理的な選択になる。
- 肉・魚・卵・大豆製品
- 1食あたり20〜30gを目安
- 食事が整えば基本これで十分
- 他の栄養素も同時に取れる
- 食事で不足する分を補う
- 手軽に20g追加できる
- 「必須」ではなく「便利なツール」
- 魔法の粉ではない
まとめ
タンパク質の必要量は、目的によって変わる。
一般成人の基準(0.8g/kg)から、筋肥大を目指す人(1.6g/kg前後)、減量中のトレーニング者(2g/kg前後)まで幅がある。「体重×2g」は誰でも必要な数字ではなく、特定の状況での目安値として根拠がある。
大事なのは、まず自分の目的を確認して、今どれくらい取れているかを把握すること。そのうえで足りなければプロテインを使えばいい。
数字は目安。複雑に考えすぎなくていい。
- まず目的を確認する(健康維持 / 筋肥大 / 減量中)。目的によって目標値が変わる
- 今の食事でどれくらい取れているか把握する。肉・魚・卵・豆腐など主なタンパク源を1日分計算してみる
- 筋肥大目的なら体重×1.6g/日を目安に設定。減量中ならこれより高め(2g/kg前後)でも根拠あり
- 1食あたり20〜30gを目安に3〜4回に分けて摂る。「上限」ではなく「確実にシグナルが入る目安量」として使う。一度に多く摂ることが無駄というわけではないが、分散の方が実用的
- 不足分をプロテインで補う。「必須アイテム」ではなく「補助ツール」として使う
腎機能に問題がある方は、高タンパク食に注意が必要です。慢性腎臓病の場合はタンパク質制限が推奨されることがあります。健康上の懸念がある方は、目標量を設定する前に必ず医師にご相談ください。また、本記事の目安量は健康な成人を対象とした研究に基づくものです。年齢・疾患・生活習慣によって適切な量は異なります。すべての人に同じ数字が当てはまるわけではありません。