最近、筋肉痛がぜんぜん来ない。
同じメニューを続けていたら、そうなる。最初はあんなに痛かったのに、いつのまにか翌日ケロッとしてる。「これ、もう効いてないのかな」って思い始めた。
そういう人、結構多いと思う。
筋肉痛がなくても、筋肉は成長する。筋肉痛はトレーニングの「品質保証」じゃない。
筋肉痛(DOMS)って、そもそも何?
正式名称は「遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness)」、略してDOMS。運動の翌日〜2日後にじわじわ来る、あの痛みのことや。
昔は「乳酸が溜まるから痛い」と言われてた。でも今は違うことがわかっている。乳酸は運動後1〜2時間でほぼ消える。DOMSが翌日に来るのと、タイミングが全然合わない。
じゃあ何が原因か。現在の主流な考え方は、筋繊維の微小な損傷と、そこに続く炎症反応だ。特に「エキセントリック収縮」——筋肉が伸びながら力を出す動き——で起きやすい。
たとえばスクワットでゆっくり下ろすとき。あの「ゆっくり下ろす」フェーズが、筋繊維に一番ダメージを与えてる。
で、筋肉痛は「成長の証拠」なのか?
これ、実際に比べた研究がある。
Flannたち(2011年)は、こんな実験をした。「筋肉痛が出るトレーニング」と「筋肉痛が出ないトレーニング」を別々のグループでやらせて、筋肥大の度合いを比べた。
結果:筋肉の成長に、有意な差はなかった。
SchoenfeldとContreras(2013年)のレビューも同じ結論。筋肉痛と筋肥大の間に明確な相関関係はない、と言っている。
つまり、痛くても痛くなくても、成長の度合いはほぼ同じ。グループ別に図示するとこうなる。
じゃあなんで、初心者は筋肉痛がひどいのか
新しい動きに対して、体がまだ慣れていないから。
McHugh(2003年)の研究によると、DOMSが出やすいのは「その動きに慣れていないとき」が最大のファクター。同じ刺激を繰り返すと、体は次第にダメージを受けにくくなる。これを「繰り返し効果(Repeated Bout Effect)」という。
職場に例えると、新人のうちは慣れない仕事で疲れ果てる。でもベテランになると同じ仕事でも平気になる。仕事量は変わってないのに。
体も同じ。慣れるとダメージが減る。でもそれは、成長が止まったわけじゃない。
Damasたち(2018年)の研究では、筋肉痛がほとんど出なくなってからも、筋タンパクの合成は続いていることが確認されている。この流れを図にするとこうなる。
筋肉痛がなくて困るのは、どんなとき?
正直、ほぼ困らない。
むしろ筋肉痛がひどすぎると、次のトレーニングまでの回復が遅れる。週の総負荷量が下がる。それのほうが問題になることがある。
「筋肉痛がない→効いてない」ではなく、「同じ刺激に慣れてきた」というサインとして受け取るほうが正確。
新しい種目、重量の増加、セット数の変更。こういう刺激の変化が、また体を動かしてくれる。筋肉痛の有無は、その指標にはならない。
- 筋肉痛の有無でトレーニングを評価しない。代わりに「重量が増えたか」「レップ数が増えたか」を指標にする
- 筋肉痛が来なくなったら、刺激を変える。重量を増やす、テンポを変える、種目を変えるなど
- ひどい筋肉痛は逆効果になることも。痛みが強い日は無理せず、軽い有酸素か休養を選ぶ
- 「慣れ」は体の適応の証拠。筋肉痛が減っても、それはネガティブなサインじゃない
DOMSのメカニズムはまだ完全には解明されていない。「炎症仮説」が主流だが、単一の原因ではなく複合的な要因によると考えられている。また、個人差も大きい。同じトレーニングでも筋肉痛が出やすい人・出にくい人がいる。
まとめ
筋肉痛は「筋肉に慣れない刺激が入ったサイン」であって、「筋肉が成長しているサイン」ではない。
トレーニングの効果を測るなら、筋肉痛の有無よりも「重量が伸びているか」「筋肉量が増えているか」「パフォーマンスが上がっているか」を見るべき。
筋肉痛がなくなってきたのは、体がちゃんと適応した証拠かもしれない。
見るべきはそこじゃないから。