最近、筋肉痛がぜんぜん来ない。

同じメニューを続けていたら、そうなる。最初はあんなに痛かったのに、いつのまにか翌日ケロッとしてる。「これ、もう効いてないのかな」って思い始めた。

そういう人、結構多いと思う。

結論

筋肉痛がなくても、筋肉は成長する。筋肉痛はトレーニングの「品質保証」じゃない。

筋肉痛(DOMS)って、そもそも何?

正式名称は「遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness)」、略してDOMS。運動の翌日〜2日後にじわじわ来る、あの痛みのことや。

昔は「乳酸が溜まるから痛い」と言われてた。でも今は違うことがわかっている。乳酸は運動後1〜2時間でほぼ消える。DOMSが翌日に来るのと、タイミングが全然合わない。

図 1 — 発現タイミングの比較
0h 6h 12h 24h 48h 運動後の経過時間 乳酸濃度 筋肉痛(DOMS)
乳酸は運動後数時間で消えるが、DOMS は24〜48時間後にピークを迎える(概念図)

じゃあ何が原因か。現在の主流な考え方は、筋繊維の微小な損傷と、そこに続く炎症反応だ。特に「エキセントリック収縮」——筋肉が伸びながら力を出す動き——で起きやすい。

たとえばスクワットでゆっくり下ろすとき。あの「ゆっくり下ろす」フェーズが、筋繊維に一番ダメージを与えてる。

で、筋肉痛は「成長の証拠」なのか?

これ、実際に比べた研究がある。

Flannたち(2011年)は、こんな実験をした。「筋肉痛が出るトレーニング」と「筋肉痛が出ないトレーニング」を別々のグループでやらせて、筋肥大の度合いを比べた。

結果:筋肉の成長に、有意な差はなかった。

SchoenfeldとContreras(2013年)のレビューも同じ結論。筋肉痛と筋肥大の間に明確な相関関係はない、と言っている。

つまり、痛くても痛くなくても、成長の度合いはほぼ同じ。グループ別に図示するとこうなる。

図 2 — 筋肥大量の比較(Flann et al., 2011 参照)
筋肉痛あり
(エキセントリック)
筋肉痛なし
(コンセントリック)
両グループの筋肉の適応量(筋リモデリング)に有意差なし。Flann et al. は CSA ではなく筋繊維の再構成を計測した論文。バーは方向性を概念的に示したもの。

じゃあなんで、初心者は筋肉痛がひどいのか

新しい動きに対して、体がまだ慣れていないから。

McHugh(2003年)の研究によると、DOMSが出やすいのは「その動きに慣れていないとき」が最大のファクター。同じ刺激を繰り返すと、体は次第にダメージを受けにくくなる。これを「繰り返し効果(Repeated Bout Effect)」という。

職場に例えると、新人のうちは慣れない仕事で疲れ果てる。でもベテランになると同じ仕事でも平気になる。仕事量は変わってないのに。

体も同じ。慣れるとダメージが減る。でもそれは、成長が止まったわけじゃない。

Damasたち(2018年)の研究では、筋肉痛がほとんど出なくなってからも、筋タンパクの合成は続いていることが確認されている。この流れを図にするとこうなる。

図 3 — 繰り返し効果(Repeated Bout Effect)
W1 W2 W4 W8 トレーニング継続週数 筋肉痛の強さ 筋タンパク合成
トレーニングを続けると筋肉痛は減少するが、筋タンパク合成(成長シグナル)は維持される(Damas et al., 2018 より概念的に図示)

筋肉痛がなくて困るのは、どんなとき?

正直、ほぼ困らない。

むしろ筋肉痛がひどすぎると、次のトレーニングまでの回復が遅れる。週の総負荷量が下がる。それのほうが問題になることがある。

「筋肉痛がない→効いてない」ではなく、「同じ刺激に慣れてきた」というサインとして受け取るほうが正確。

新しい種目、重量の増加、セット数の変更。こういう刺激の変化が、また体を動かしてくれる。筋肉痛の有無は、その指標にはならない。

実践アクション
  1. 筋肉痛の有無でトレーニングを評価しない。代わりに「重量が増えたか」「レップ数が増えたか」を指標にする
  2. 筋肉痛が来なくなったら、刺激を変える。重量を増やす、テンポを変える、種目を変えるなど
  3. ひどい筋肉痛は逆効果になることも。痛みが強い日は無理せず、軽い有酸素か休養を選ぶ
  4. 「慣れ」は体の適応の証拠。筋肉痛が減っても、それはネガティブなサインじゃない
注意点・この記事の限界

DOMSのメカニズムはまだ完全には解明されていない。「炎症仮説」が主流だが、単一の原因ではなく複合的な要因によると考えられている。また、個人差も大きい。同じトレーニングでも筋肉痛が出やすい人・出にくい人がいる。

まとめ

筋肉痛は「筋肉に慣れない刺激が入ったサイン」であって、「筋肉が成長しているサイン」ではない。

トレーニングの効果を測るなら、筋肉痛の有無よりも「重量が伸びているか」「筋肉量が増えているか」「パフォーマンスが上がっているか」を見るべき。

筋肉痛がなくなってきたのは、体がちゃんと適応した証拠かもしれない。

見るべきはそこじゃないから。